今の自分たちに分相応な歩きができたかなって
思えた2日間。
ただ一つを除いてはね。
ということで、気持ちよく報告を終わらせたいから、
いやな思い出をまず、はき出したいと思います。
おつきあいください。
登りの途中で追い抜かれた、地方から来てた少年サッカーチームの
団体さん24名プラスコーチとガイドさん。
7合目で休憩してるときに、一緒になったんだけど、
この中の1人の少年が走ってトイレに行こうとして
何かに躓いて転んだ。
この時、コーチも含めみんな笑ってこの子のことをバカにしてた。
「普通、大人なら こんなとことで走るなって注意するでしょ」
とは思ったけど、別に私たちに害あるわけでもないから
見てるだけだけにとどまった。
でも、誓った、
「絶対に、この子達と関わらない!!!」
だから、ずっと避けて歩いてた。
抜きつ抜かれつの繰り返しだったけど、
できるだけ先を譲って、私たちは後から歩くようにしてた。
無事に、山頂にたどり着き、あとは下山を残すのみ。
多少の疲れはあるものの、まだまだ大丈夫!
下山もそれなりに順調!私はね。
ひょん太は疲れが出始めたのか、少し遅れ始めました。
それでも、コースタイムくらいでは歩けてました。
富士山 吉田ルートを歩いたことがある人は知ってると思いますが
下山道は、写真のようにザレ場の九十九折の道をただひたすら
下るのみです。
岩場もなければ、段差もありません。
だから、滑ります。油断するとこけちゃいます。
下山では、ほぼ私が先を歩いてて、5mほど後ろを
ひょん太が歩いてる状況でした。
運悪く、あの団体さんが後ろから追いついてきちゃいました。
サッカー少年だけあって、とにかく元気です。
うらやましいくらいに。
でも、その元気さが・・・・・ねぇ。
人がいようがいまいが、かまわず全力で駆け下りるんです。
これがけっこう危険。
そして、曲がり角のとこで先に下りてた子供が受け止める。
(無視!無視!無視!今年は、絶対に他人には関わらない)
こんな様子が繰り返されいた時でした。
私がジグザグの曲がり角にたどり着く直前だったでしょうか
何となくなんだけど、後方から聞こえた
「ラーーーク!!」
ただ、私もはっきりと聞き取れた訳ではありませんでした。
おそらく
「ラーク!ラーク!転がる!!」
と聞こえたような・・・・・
(えっ?ラク???こんなとこで?)←心の声
声がした方を振り向いて見たら・・・・
ひょん太より、さらに10mほど後ろにいた男性が
道の真ん中で転んでた。
おそらく、身体をはって岩を止めようとしてたらしい。
ゴロンゴロンゴロンゴロン・・・・
岩が転がってる。
「ひょん太 避けて!!!!」
とっさに叫んだ。
私が振り返った状態で、私は左に、ひょん太はとっさに
壁際の右に避けた。
避けた・・・・・・・・・・・・・・・ら・・・・・・
なんと、転がる岩が、方向を変えてひょん太めがけて
転がり出した。
「避けて!!避けて!!!逃げて!!!!」
ちょっと、戸惑ってるひょん太。
そして、岩を飛び越えるような感じで私がいる側に
逃げた。
その直後、ひょん太の横を岩が転がり抜け、
私の前を転がって、そして止まった。
「大丈夫?」
それしか、ひょん太にかける言葉が出てこなかった。
「うん、だいじょうぶ」
あれ?ひょん太の顔色ってこんなだったけ?
唇は赤みが残ってるけど、この子ってこんなに白かったっけ?
白いっていうか青い???
「大丈夫?顔、しろくなってるよ?」
「わかんないよ、自分じゃ見えないんだから」
ごもっともでございます。
これが、顔面蒼白っていう色なんですね・・・・
男性が下りてきた。
「大丈夫ですか?」
「はい・・・・子供が落としたんですか?」
「いや、落ちそうな岩があったから、あの子達が触って
落ちる前に転がしておこうと思って、ちょっと蹴ったら、
転がり出しちゃって、止めきれなかった」
「そうですか・・・・・」
今、思うと、「そうですか」じゃないだろう!って
だいたいさぁ、前に人が歩いてるのに、転がすか?普通!
自分に突っ込みいれたくなるんですが、その時は余裕なくて。
「あの、ずっと思ってたんですけど、あの周りを気にせず
駆け下りるの危険なんで、注意してもらえませんか?」
「そうなんですよね、自分もそう思ってはいたんですけど」
あんた、ガイドなんだろ
注意しようよ、それくらい!
と思ったんですけどね、まだ、動揺してる私。
なんかそこまで言う余裕がなくて。
下山を開始してからも、ずっとなんか、もやもや。
下山しながらも、ずっとあの場面がプレイバック。
もし、もう少し下の方にいて、「ラク」の声に気づかず
ひょん太を直撃していたら・・・・
打撲ですんだだろうか?
ころんで骨折?
下手したら、転んで滑落していたかも・・・
山岳保険はいっててよかったぁ・・と思う自分。
こんなんで、保険を使うのか?・・・と思う自分。
石を落とした人が、保険から出してくれるのか?・・と考える自分。
入院ですめばいいけど、それ以上?だったら・・・・
と、マイナスな考えが駆け巡りだしたら、怖くなってきた。
そんなときも、頭の中ではあの岩が転がってる・・・・
わたしの、もやもやの原因がわかった!
「ねぇ、さっきの人、ひょん太に謝ってくれた?」
「いや」
「ふ~ん・・・」
七合目のトイレまで下りてきました。
あと1/3くらいかな。
その時
「さっきはすみませんでした」
子供にも、 「怖い思いさせてごめんね」
「ほんと、怪我しなくてよかった」
「えぇ、まぁ、怪我ですんでれば、それはそれで
よかったかもっていう感じですが・・・」
いやみでも、なんでもなく、ほんとそう思ってたんです。
どんな状況になったとしても、生きていてくれればそれでいい!って。
それがそのまま、口から出ちゃいました。
岩を落としたこの男性も、きっと自分がやってしまったって
いうことで、動揺してたんでしょうね、その時は。
もうね、この時点で下山のテンションがさがちゃって、
当初、下山到着時間を5時半としてたんですけど、
私も足が進まなくなちゃって、心臓、今頃になって
ばくばくし始めちゃって・・・・
もう、最終バスに間に合えばいいか!と、目標を7時に
引き延ばしゆっくりと歩くことにしました。
歩きながら、帰りのバスの中でひょん太と話したんですけどね
「ねぇ、“ラーク”の声、聞こえた?」
「聞こえないよ」 (えっ?)
「ラーク、ラーク、転がるーって叫んでたよ」
「聞こえないよ」
「じゃぁ、なんで振り向いたの?」
「うーん、なんとなく、ゴロゴロゴロって
聞こえた気がする」
「ママが 避けて!!って叫んだのは聞こえたでしょ?」
「聞こえないよ」
「えっ?じゃぁさ、反対反対、こっちに来て!!て言ったのは?」
「聞こえないよ」
さようですか・・・・・
疲れのピーク、それを越えている子供って怖いですね。
歩くことで頭がいっぱいいっぱいだったんでしょうね。
まわりにまで、気を回している余裕なかったんでしょうね。
それじゃダメなのかもしれないけど、転ばないように
歩こうとするだけで精一杯だったんですね。
今だから、言える・・・
母親の愛情の叫びは届いてなかった・・・・orz
いやぁ、子供と山を歩く怖さを思い知らされました。
新たに、親が気をつけないといけないとこ、気づかされました。
今回は、たまたまが重なって、無事でいれたようなものだと
思います。
たまたまの坂道の斜度。
これが、もう少し急な場所だったら、避けるに避けきれてなかったかも。
いろんなことのこれの、どれか一つでも狂っていたら、怪我してたと
思います。
吉田ルートも、登りは落石防止の壁が取り付けられてるし
下りも落石よけのシェルターのなか歩くようなってる場所あるけど、
まさか、まさか、こんなことがおこるとは思ってもいませんでした。
ほんと危険と隣り合わせだなと改めて実感。
みなさんも、気をつけて、お山を楽しんでください。
くれぐれも、石は落とさないように!
転がってきた岩がこれで~す!
これが、ボーリングの玉のようにゴロゴロゴロゴロと
坂道を転がってきました。
プロトレックの時計と比べると大きさわかるかな?
写真でみると、それほど大きく感じないけど、これが
転がって迫ってきたときには・・・・